懐かしいものを見ると、その場にないはずの匂いを感じることがある。
これを思い出の匂いと呼んでいる。
感覚に宿る匂い。
自転車に乗りながら感じたことがあった。
思い出という感覚は、強く刻まれたときの風景だけじゃなくて心拍数や取り巻いている環境なども含まれてるって。
自転車に乗って古い場所に行くと、自然に心拍数が上がっているので思い出の再現性というか胸のトキメキみたいなものが一段回上がる感じがする。
感動に似た感覚。
その感覚を噛みしめていると、風景だけじゃないんだな。って。
当時、何を考えていたかとかどんな匂いがしていたかとかそういう覚えているはずのないようなもの、輪郭まで見えてくる。
夕暮れ時のどこかの家の晩御飯の匂いと自動車の排気ガスの匂いが混ざったような町の匂いが好きだ。
あと、そうだ。
湿度も思い出に関係していると思った。
一つ一つの感覚を噛みしめていると面白い。
行ったことのない古い町を見てなんだか懐かしい気持ちになる時に感じる匂いは、脳内で錯覚して似た思い出から引っ張り出してきただけのものかもしれないけれど、その匂いを知っていることがなんだか嬉しく思えた。
気づこうとしなければ気づけない感覚を、一つでも多く知りたい。
確かにそこにあるから。
そうすることで薄っぺらい自分を隠せるわけではないけれど、なんだか大切なことのような気がしてね。
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